2017年5月2日火曜日

あの顔で…


さて、80年代に「あの顔で SF書くか ホトトギス」と評された美貌のSF作家。現在であれば「幻想文学」と呼ばれるであろうその作品は、デビューがSFマガジンであったため「SF」と呼ばれ、処女作品集「夢の棲む街」は1978年にハヤカワJA文庫<JA107>として刊行された。(その後「夢の棲む街・遠近法」として1982年8月に三一書房から新装版で再版) 

夢の棲む街は、衝撃的だった。読んだ事の無い文体、 出会った事の無いイマジネーション。エキゾチックとも違う。ファンタジーとも違う。一気にハマってしまった。ところが、である。彼女は希代の?寡作であり、その作品集は長らく「夢の棲む街」と「仮面物語」(徳間書房)と「オットーと魔術師」(集英社)の3冊しか無かった。しかし、人知れずひっそりと刊行された1冊がある。一説には500部限定と聞いた事がある。それがこの本であるのだが。

 1982年 深夜叢書刊



これは歌集である。ほぼ、広告宣伝はなされなかったと記憶している。ではなぜ、私はこの本の刊行を知ったのだろう?う〜〜〜ん…当時田舎の高校生だった私が、なんでこんなマイナーな(失礼)本を入手できたのだろうか?

その答えは、実は薬師丸ひろ子にあった(笑)当時、角川映画を担っていた薬師丸ひろ子。角川書店が発行していた情報誌「バラエティ」には毎回特集が組まれた。あと、新井素子と吾妻ひでおの連載とかもあったぞ(笑)
そんな高校生うってつけの雑誌上で、俳句の企画があったと記憶している。登場するはなんとダーティペアで人気絶頂期の高千穂遙と山尾悠子!ハヤカワJA出身と言う意外なんの共通点も無いこの2人に俳句を詠ませるという謎企画。しかも、山尾悠子の俳句に対して「やっぱり短歌向きの人だ」って、いったなんなんだろう、この80年代的な感覚は!

とはいえ、 この企画において私は山尾悠子が短歌集を上梓した事を知り、駅前の本屋に注文に走ったのだ。多分そんな事だったと思う。それから、長らく本棚に入れず常に机の上におきっぱなしであり、日焼けさせてしまった……


それから幾星霜。さすがに寡作とはいえ、何冊かの作品集も出た。そして、今年のはじめにTwitterで、最近の朝日新聞の書評欄に、香山滋の短歌集と比較するようなかたちで「角砂糖の日」の書評が載っていた事を知る。なぜ、このタイミングで?その謎はすぐに解けた。

去年の暮れに再刊されていたのだ!!

うわぁ〜〜〜、しまったぁ! あわせて所々方々を探るも売り切れ品切れSoldout。とほほ。一生手にする事が出来ないのか…という悲しみに打ちひしがれ、気分も沈みがち。毎日毎日ネット巡回するも、 そう簡単に出物はない。なんせ今回は300部限定で、あるギャラリーがイベント的に再版しただけなので、増刷はもう無いだろう。

しかし、しかし、やっとヤフオクに出品されているのを知る。しめしめ。入札者は数名。価格は? 販売価格に若干の上乗せ程度。オリジナル版は密林のユーズドで50Kで瞬殺だったようなので、いかほどの値段がつくかと思ったが、まだこの程度か?それとも、嵐の前の静けさか?最終的に、もう一人の人とぎりぎりまで競り合い、そこそこの値段でゲット!いや〜、いままで購入した本の中で、専門書と洋書以外では、一番高かったかもしれない。



赤いクロス張りに箔押し。なかには合田佐和子ほか3名の挿画があって、著者のあとがきがあって、しかも掌編「小鳥たち」が挟み込みされている。


これで活版印刷なら言うことなしなんだけどなぁ(笑)とはいえ、またひとつ宝物が増えました!素敵な本をありがとうございます。